2016/03/03(木) 16:14

響きあう ありのままの言葉〜出会った人の心を揺さぶり続けたパフォーマンスと言葉の数々。2012年三宅洋平・選挙フェスの記録

 山本太郎さんが最初に立候補した選挙のとき、音楽イベントを企画し、盛り上げた人がいました。彼の名前は三宅洋平。ミュージシャン。多くのミュージシャンが出演して観客を集めた荻窪での演説会を企画し、自身もそのステージに上がった時、人生を大きく変える言葉を口にしたのでした。 「次の選挙には、オレも出ます」 渦巻く拍手の中で照れくさそうに笑いながら、自分から生まれた言葉を確かめるように、ギターをかき鳴らす彼。 その時。そこから。また。 何かが生まれようとしていました。    

新たな流れの誕生

 

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眠ってるみんなを覚まさせたい

 

次の選挙。それは2013年7月に行われる参議院議員選挙でした。そこへ向けて動き出した三宅さんは、春から全国をまわるトークライプツアーを始めました。彼が今までツアーをしたり、参加した音楽フェスで主催者をしていた人達や、友人知人のつながりを通じての立候補報告ツアー。

 

 「10円ハゲつくって防弾チョッキ着て演説している太郎君を見て、この人をひとりにしてはいけないと恩ったんだよ。そしたら、次の参議院選には僕も出ますと言っていた(笑)。それが始まり」 「喜納さん、太郎さんを応援したことから、選挙に出ることが、すべてをなげうち、どれだけぼろぼろになっていくかわかっていたので、覚悟があった。本当は地方議会に出たかったんだよ。震災後に沖縄に避難した僕からすると、年間150日東京に行くのは自殺行為だからね。それに、きれいな湧き水を各県にひとつづつくりましょうという法律をつくるより、自分たちでやる方が大事だと思うから。供託金も高いし」

 

 選挙に立候補するには、事前に供託金を支払わないといけません。その金額は地方議会なら数十万円(自治体による)。参議院議員は小選挙区と全国比例区があり三宅さんは、一番お金のかかる全国比例区(政党所属者のみ)に、小さな環境政党「緑の党」から立候補することを決めました。それはどうしてだったのでしょう? 「僕は眠っているみんなを覚まさせたいの」 「平和な世界を本当につくりたいなら、ひとりひとりが最大限の努力をしないとできない。それは何万人もの意識の変化がないと実現しない。それを日本中の人達に伝えて、変化を起こしていきたいから全国比例区にしました。日本の緑の党は世界中の緑の党とつながっているから、既存政党にない可能性があると思うよ。  今まで、嘆願、誓願、陳情、委員会会議への参加、いろいろやった。そんな中で、自分がまだやっていないことがあった。それが国会へいくこと。誰かがやれば、真似する人が出てくる。その矢面に自分が立とうと。

 

 それで、2015年の統一地方選から、全国でなもない一般人が当たり前に立候補していく世の中になればいい」 「ひとりひとりが変われば世界は変わるよ」

 

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動くのは感動したとき

 

 意識が変われば行動が変わる。それはいろんな場面で出てくる言葉ですが、その変化はどんな時に生まれてくるのでしょう。 「人の心が動くのは、感動した時だよね」

 

 そう語る三宅さんの顔は、スッキリとした笑顔に変わっていました。 「物騒な話は誰も好きじゃない。世の中が怖いかハッピーなのかは思い込みでできていくものさ。敵をつくるのは自分の心だから、自分が思い切り対抗する人に対しても、リスペクトを忘れないでいたい。みんなそれぞれ事情があるから、それをわかりあっていきたい。そのために相手と話し合いがしたい。 安倍首相にもまずは「ありがとうございます。本当にご苦労様です」と言いたいし、その上で、ちょっと僕の話も聞いてくださいって言うよ(笑)」 「オレを動かしているのは、末端の民衆の声。ひとつひとつのエピソードが自分を支えている。しかるべき方法で、誰も傷つけずにやっていきたい。葛藤するのはやめないけどね」

 

 対立を超えた対話の場づくり。彼はそれをアイヌの言葉を借りて「チャランケ」と表現しました。この言葉をキーワードに、選挙をおもしろくする試みを始めていったのです。

 

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マツリゴトをおもしろくする

 

 タイトなスケジュール、たくさんの問いかけ、集中する眼差し。立候補したことで生まれた変化は時に、いろんなプレッシャーを生み出していきます。同時にそれは、三宅さんの中で、自分を突き動かすプラスのエネルギーに変わっていきました。 「今は子どもが生まれた時の感覚に似ている。がんばっているけど、まだがんばれる。それのために大変になってもいいや、と思える幸せがあるよ」

 

 そして、こんな構想を描いていました。 「選挙がアート、壮大な集団アート。ドンキホーテ的なパフォーマンスアートになればいい。政治は「マツリゴト」。祭りだからね」

 

 それにはどうしたらいいと思ってるのか? 「その、どうしたらいいかを自分で考えるのが楽しいんだよ!(笑)  僕達みたいなメディアにのらないミュージシャンをのせてきたのは、各地のイベントオーガナイザー 。彼らの努力やネットワークの使い方すべてが選挙のやり方と通じているんだ。だから、やってきたことは今までと何も変えないで、意識だけ変えればできることがたくさんある」

 

 さらに彼は、その変革をやるのは自分ではなく、ひとりひとりだと言うのです。 「みなさんが僕を応援するんじゃない。僕がみなさんを応援しているんです(笑)」 こうして、音楽フェスをしながら選挙演説をする「選挙フェス」が誕生していきました。

 

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共鳴の始まり

 

 7月4日。参議院議員選挙、公示。三宅さんはその会場に、ずっとフィールドにしてきた吉祥寺を選びました。 「吉祥寺のクラブでバイトしていた時、初日に店長からフロア行ってタコ踊りしてこいって言われて、必死で踊ってたんだよね。パッ目を聞けたらさ。ひとりまたひとりと人々がフロアに降りてきて、オレと一緒に踊り始めたんだ。あの時オレは、自分の仕事を悟ったんだよね。オレは常に最初に踊り出す人聞になろうと思った。たったひとりのダンサーから始まるって学んだんだ。

 

 だからもう一回言うよ。特別な気構えも、気負いもいらない。今までのオレらのままで、これまでやってきたことに自信を持って、ちょっと永田町を向けばいいんだよ。

 

 選挙は「タタカイ」じゃないから「マツリ」だから。今日はただ、オレたちの「船出」。オレが当選するかしないかなんて、これから起きることのちっちゃな副産物。通り道に過ぎないんだよ。  もうオレは止まんないからね!  オレたちは、怒り、泣き、笑い、喜びながら、オレたちの思うことをちゃんと実現していこう!知らんこと多いけんね!国会に行って教えてもらおうや」

 

 ありのままのあなたでいい、それを政治に届けよう。オレはそんなあなた達を応援する…。ユーチューブで流されたこの日の映像はツイッターやフェイスブックで瞬く聞に広がっていきました。そしてコメントにあったのはこんな言葉。 「感動した」 「自分もそう思っていた」 「なぜか涙が流れる」 「魂が震える」  そこにあるのは、共感、共鳴。思いを共有できる人をみつけた喜び。そしてそんな人達が、三宅さんを応援したい人達が自発的に活動する「勝手連」とつながり、北海道から沖縄まで、全国20ヶ所、23回の「選挙フェス」を盛り上げていったのです。

 

サポーター

 

共鳴の広がり

 

 三宅さんは立候補にあたり、9つの政策ビジョンを発表しました。その中には、今ある問題を解決するために、何から何へ変わればよいかというアイデアが盛り込まれていました。その根っこになっているのは、 「地球が平和であって欲しい」 「子どもたちが幸せに暮らせる地球を残したい」 という願いと、そのために自分たち人聞が、 「地球に有益な微生物でありたい」 という思いでした。そしてその願いは、多くの人が抱いているものでもありました。

 

 選挙フェスは東京から地方へと移り、沖縄から北海道まで北上していきます。イベントはその地域のオーガナイザーが三宅選対本部と連絡をとりながら主催し、多くのミュージシャン、アーティストが参加。ライプの他に、マルシェや他イベントとの共催もあり、インターネットや口コミで噂を聞きつけた人達が駆けつけてきました。

 

 最初は若い人や音楽好きが目立っていましたが、回を重ねるごとに、えっ、この人が? というような人達を見かけるようになりました。たとえば、仕事帰りのサラリーマン、和服姿の女性、白髪のご夫人、外国の方、子ども連れ…。なんと海外から緊急帰国したという人達も!  会場では三宅きんのトークが終ったと同時にカンパの行列。中には次の日チラシまきを手伝う人も!こうして共鳴の輸がどんどん広がっていったのです。

 

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そして、渋谷

 

 7月30日。選挙フェス震後の目、渋谷ハチ公前はスタートから人で溢れかえっていました。ステージでは久々に復活したDACHAMBO、毎日のようにステージに立ってきたcro-magnonと田我流、京都から駆けつけたFRYING DUTCHMAN、盟友達が集う選挙フェスパンドなどが演奏し、「チェルノブイリへのかけはし」の野巴美香さん、緑の党候補者の木田せっこさんなどがスピーチ。最後の山本太郎さん登場で、会場はすし詰め。身動きがとれない状態に。

 

 スピーチに熱がこもり、予定時聞をオーバーした太郎さんを制するスタッフに何度も声をかけ、時間を延長した三宅さん。ネット配信用カメラに向かって「東京選挙区は山本太郎、比例代表は三宅洋平」と毎日叫んできた彼の思いが現れていました。

 

 さらに人が押し寄せ、注意を促すアナウンスが繰り返される会場。そんな中、三宅さんの最後の演説が始まりました。既に数日前から声が枯れ、歌えなくなっている彼。手には1枚のメモを持っていました。 「僕の今日のスピーチの最後は、憲法九条を読みます。僕たちはこれを世界に宣言してるんです。それと現実を見比べて、今の政権が言ってること比較して、自分で未来を選んで下さい」 「人類の歴史からもう争いはなくすときなんだよ。とってもダサいんだよね、それは。もう変わる時だよ。これを生み出すために何百万人が死んだか。何千万人の母親が涙を流したか。これはねGHQ に押し付けられた憲法じゃないよ。あの時の日本人の心からの叫びだね。財布取られないでも持ってかれない国のスタンダードを世界のスタンダードにして、戦争ボケしてる奴らに平和ボケがどんだけ楽しいか教えてやろうよ」

 

 拍手でわき上がる会場。そして投票日がやってきました。

 

DSC_6976 「開票後のインタビュー」に続く こちら

この記事は 2262 回読まれました 最終修正日 2018/04/15(日) 11:11
澤田佳子 さわだけいこ Kco Sawada

ローカルメディア3代表・編集長。コミュニティ×循環型の暮らしを求めて関東から九州へ。九州のローカルネットワークをつなぎながら、固定概念を超えた新たな選択肢「次の暮らし」が生み出す世界の実現に向かう。

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