政治から居場所づくりを
立候補するのは怖かったんだけど、最後の決め手になったのが、50代以上しか出ていなかったこと。30代、40代がいないなら僕が出なきゃって。もし誰か出たら応援しようと思っていた。若手が出ないと、僕自身が興味持たないな。知らないうちに舛添さんになって終わり。それじゃあ税金もったいないよ。若い人が戸を上げなきゃ」 家入さんが立候補を表明したのはツイッター 。「1000リツイートされたら出馬する」と流したところ、あっという聞に1000リツイートされて、立候補がぐっと近くなりました。しかし、本格的に立候補を決めたのは事前審査の締め切り2日前だったそうです。
「居場所をつくる活動を始めたのは引きこもりをやったのが大きいな。中2〜18歳くらいまではずっと居場所のなさを感じていました。そんな中で会社とか、シェアハウスとか、足元のやるべきこと、興味あることをずっとやってきたら、それが全部居場所づくりにつながっていた。僕は形をつくることでしか自分を認めてもらうことができないと思ってきたけど、30を超えて、全部つながっているのがわかりましたね。僕は居場所がないから次、次、次って進んできた。会社をつくっても、みんなすぐ僕のことなんて忘れちゃうさって思っていて、そのコンプレックスがモチベーションだった」
みんなでつくる『ぼくらの政策』
選挙費用はクラウドファンデイング。744万7500円を6日で集めそうです。 「今の法律内でどこまでできるかやってみたかったから、「選挙をハックする」ってテーマでいろいろやりました。選挙プランナーの松田馨さんがいたからできたことですね」今回の選挙では、みんなから意見を集めて政策をつくろうと思っていたのだそうです。これは、インターネットで家入さんの五つの質問を問いかけ、返ってきた答えを分析して120の政策をつくりました。「ぼくらの政策は選挙前から絶対やろうと思っていました。高いところから一方的に「これが正解です」みたいに語る政治家には、僕らの戸が届いてないと思ったから。だったら身近な小さなことでもいい、普段生きてる中で感じる生きづらさや地域の問題などを、ネットを使うことで双方向に対話をしながら集めたいと思ったのです。それが政治なんじゃないか、と。あまりにも政治と僕らが今は離れすぎてるのではないか、と」弱い立場の人達の気持ちがわかる彼は、こんなふうにも思っているそうです。
「逃げていいんだよ。学校なんか行かなくていいんだよ。逃げるのは防衛本能だから。うさぎはライオンから逃げないと食べられてしまう。だったらたまに、逃げていいと言ってあげる人がいないと折れちゃう。空気を読まないといけないのは苦しい」そんな人達の声を汲み上げたいと思ったのが、「ぼくらの政策」のきっかけでした。
次の誰かに『恩送り』
いくつもの会社を立ち上げて企業家として成功している家入さんですが、今の経済とは違うあり方を模索しているそうです。 「ペイ・フォワードって考え方があって。「カルマキッチン」というレストランがあるのですが、ここはお会計ゼロ。あなたの会計は前に来た人が払っています。あなたも次の人の分を払いませんか? 農作業でもいいですよって提案をしていて、お金ではなく、恩を返すのでもなく、恩をつなげていくやり方です。
僕はこの考え方をどの活動のべースにも置いていて、シェアハウスには行き場のない子達が泊まりにきて住んでしまうんですが、彼らに機会を与えてるんです。企画やプロジェクトをやって、技術を教えていく。出ていく子も多いんですが、僕は彼らに恩返しを求めていなくて。常に自分が何者でもなかった頃を思い出してやってあげたいし、やってあげて欲しいと思っています。青空学校っていう企画は、三日間泊まりのプログラミングスクールで、ここで学んだ技術を、次の人に教えてもいいし、活かしてもいいし、先生のお手伝いをやってもいいことにしています。
雇用する、されるじゃない関係をつくりたくて。信頼が生まれてくれば、つけもできるし、お金を超えた関係が生まれてくる。まわりの人達に自分が持っているスキルを提供してみると、まわりが変わってくる。そんなことをビジネスでもやりたいと思っています」 都知事選で政治を通じて社会をよくしようという人達と知り合い、行政や政治の立場からやれる実験がたくさんあると思ったと同時に、都知事じゃなくてもできることも見えてきたという家入さん。これからも自分なりの居場所づくりを続けていくとのことです。
PROFILE 家入一真1978 年、福岡生まれ。2001 年、個人向けレンタルサーバー「ロリポップ!」を開始。2008 年、JASDAQに史上最年少で上場後、カフェやWEB サービスの会社などを連続起業。2013年12 月の東京都知事選挙に立候補し、「インターネッ党」